甘い脅迫生活
「はぁ。」
キーボード上を指が滑り続けていても、私の溜息はやまない。
こんなんで私、いいのだろうか?
婚姻届けを一緒に出しに行ったという事実は、社長の言う通り、私に自覚させてくれた。自分は現実に、この人と結婚してしまったのだという事実を。
ということは、戸籍上では私は、西園寺美織、ということになる。何そのお嬢様みたいな名前。
凄い素敵な名前だけど、なんとなく嫌。
しかも、私と社長は夫婦になるわけで。ということはそれなりに、夫婦みたいな行為もするんだろうか?
「ああっ、」
頭を抱えた。あの社長とキスとかそれ以上とか?考えただけで無理だ!
しかもその無理の意味がだめ。
男として断固無理だと言えるくらい意思の強い人間だったらどんなに良かったか。
なのに!男性としては全然アリなんて!明らかに調子に乗られそうで言えるわけがない。
問題は私の経験値にある。合コンで会う軽い男にでさえ言い寄いよられない私が、キスもそれ以上も、あの社長を満足させられるとは到底思えない。
しかも、満足させようと試みてる時点で、自分は今の状況を受け入れ始めているのだと自覚して、愕然としていた。