甘い脅迫生活




「あのっ、」


さすがに可哀そうで声をかけてはみたけど。2人の視線が痛い痛い。



「えー、式のことは、ですねぇ、何も決まってなくて。」



俯くしかなかった。だってほんとになにも決まってないし。


もしかしたら式は挙げないかもしれない。相手は西園寺グループの御曹司だ。実際に優雨が結婚したとしたらそれはそれは盛大な式でも挙げそうだけど。



……これは、普通の結婚じゃないし。



何も決定していないことを約束するのは、それこそ所長に悪い。


それに、相手が優雨だと知った時、所長ははたして仲人を快く受けてくれるのだろうか?



「なんだ、意外とそこは悠長なんだな。」

「所長。そのまだチャンスある的な顔?パワハラっすよ。」

「えっ、こういうのもパワハラになるのか?」



この、THE・お人よしを絵にかいたような所長には、プレッシャーが過ぎる気がする。


正直どうしたらいいか分からなかった。


私の結婚相手はこの会社のトップの人で。結婚の仕方が普通じゃないのを除いてもその事実をここのみんなに話していいのかどうか。


「画像とかないんですか?見てみたいー。ね?」

「あ?ああ。そうだな。見てみたいー。」


一緒に悪ノリしてる2人がこう言うのも当たり前の反応だ。


こういう時、素直に優雨のことを言ってもいいものかどうか。




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