君が好きなんて一生言わない。
「先輩は花が好きなんですか?」
「なんで?」
「園芸部に入るってことはそうなのかなって。それに先輩は知識もありますし、熱心だし」
クールな先輩のことだ、どうせ「まあね」とか「そんなところ」だとかそういう声が返ってくるかと思ったのに、結果は全然違った。
「別に」
想像もしていなかった答えに私は思わず「え?」と聞き返してしまった。
「別に花は好きでも嫌いでもない」
私には分からなかった。椎先輩が分からなかった。
「それならどうして先輩は園芸部に入ったんですか?」
すると椎先輩は作業していて手を止めて「さあね」と答えた。
「教えてくれたっていいのに」
「そう簡単には教えてやらないよ」
「ケチ」
「ケチとは人聞きの悪い」
「じゃあ、教えてくださいよ」
椎先輩は「またいつかね」と溜息交じりに答えた。
「それ、絶対に答える気がないじゃないですか!」
私の言葉には何も返さず、「こっち手伝ってくれる?」と私を連れだした。
「あ、はい!」
先輩が連れてきてくれたのは鉢植えや花壇が並ぶ場所だった。
「枯れている花があったら摘み取ってほしいんだ」
「頼んだよ」と言う先輩に私は返事をした。