君が好きなんて一生言わない。
「椎は昔っから変わらずに物静かでよ。最初に会ったときなんかすごくて。まだ小学生なのに…」


いよいよ椎先輩の雷が落ちた。


椎先輩のチョップがユズ先輩の後頭部にヒットしたのだ。


「いてえよ、椎」

「いい加減にしなよ、ユズ」


それから「これゴミ捨ててきて」と雑用をユズ先輩に押し付けてこの場から追い出してしまった。

まるで嵐が過ぎ去ったみたいに静かになった。しんと静寂が訪れて、何を話したらいいんだろうと考えていると「ごめんね」と言われた。


「ユズ、ほんっと馬鹿で」


私は首を横に振った。


「見ていて楽しいです」


そう答えると、「麗ちゃんは優しいね」と椎先輩は溜め息を吐いた。


「ユズは最初っからああなんだよ。出会ったころから少しも変わらない」

「楽しい人ですね」

「楽しいって思える内が花だね」


椎先輩は毒を吐く。

椎先輩は素っ気ない言葉を言うことが多いけれど、ユズ先輩には特に毒舌になるらしかった。

それからユズ先輩がやっていた仕事を「ほんと進んでないな」と文句を言いながらその続きをやっている。

そんな椎先輩を見ながら一つの疑問が湧いてきて、私は尋ねた。

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