跪いて愛を誓え


「開店する頃うちの店長とまた邪魔するから、お前も早く行った方がいいんじゃねーの?」


 またジャスティスが……?!


 ヒロの言葉に弾かれる様に、私は走り出していた。ティアーモへ向かって。

 また、何か良くない事が起こるんだ。早く知らせなきゃ!

 さっきまで、足が動かなかったのが嘘みたいだ。私は日が落ちたばかりの駅前を疾走した。




 息を切らせてティアーモの前まで着くと、そこにはまだ誰もいなかった。時計を見ると、開店は近いけどドアマンがスタンバイするにはちょっと早い、そんな時間。

 たった一週間ぶりなのに、木製の扉が何だか懐かしく感じる。私はそれを押し開けて中へ入った。

 店の中は私がいた時と同じ。開店準備に大忙しだ。内勤さんたちが行き交う中、中央の席にホストのみんなは集まっていた。今はミーティングの最中みたいだ。

 その席は、私が初めてホストクラブを体験した、あのシャンデリアの真下の席。

 扉を開けて入ってきた私に、真っ先に反応したのはやはり、青葉だった。男装しないでお店へ来たのは二回目。だから、ふいに入ってきた私に、他のみんなはザワザワしているというのに。


「――――和泉?! お前、何で!」


 久しぶりの青葉から、目を逸らせない。

 青葉はすぐに私の目の前へ来ると、腕を乱暴に掴む。そしてグイグイと店の外へ引っ張り出されてしまった。今入ったばかりなのに。
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