バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「このテーブル素敵ですね! ネコ脚の曲線がとっても綺麗!」

「ウォールナット木材だ。いい艶が出てるだろ」

 ちょっと自慢そうな副社長の後に続いて、私は二階を目指す。

 貴婦人のスカートが風に広がったような優美なランプシェードや、黄銅色に輝く真鍮製の華やかなキャンドルスタンドに目を奪われながら、ゆっくりと階段を上がった。

 赤いカーペットが敷かれた階段の手すりには精巧な透かし彫りの装飾が施され、窓は植物柄のステンドグラスで彩られている。

 二階の廊下を進んだ突き当りのドアを開けると、そこはロマンチックなブライズルームだ。

 淡いグリーンの壁紙と、ピンクの布張りのエレガントなセティ。

 滑らかな曲線デザインを活かしたマホガニーの三面鏡には、落ち着いたメープルゴールドのハイバックチェアー。

 壁際の可愛らしいカラクリ時計や、織物の額が、まるで本当にここで貴族が暮らしていたかのようなリアルさを醸し出している。

「よし、やるぞ」

 室内をグルッと見回した私はそう独り言をつぶやいて、持参した紙袋をサイドテーブルの上に置き、中から次々と目当ての小物を取り出した。
< 63 / 206 >

この作品をシェア

pagetop