バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「それはなんだ?」

 不思議そうに尋ねてくる副社長に、ニコニコしながら私は答えた。

「海をイメージした小物です」

 真っ白なアコヤ貝や、紅色のサンゴのオーナメント。

 半透明のヒトデ型ガラスプレートや、ターコイズのアクセサリーなんかもある。

「新婦様から聞いたんです。おふたりの出会いもプロポーズの場も、海だったって」

 新郎新婦様にとって海は特別な場所だから、ゲストサロンのウェルカムボートとかには、海に因んだ飾りつけがされてある。

 でもご自分たちのプライベートなブライズルームには、その手の飾りは一切なかった。

 おふたりが一緒に過ごす場所でこそ、特別な時間を過ごしてほしい。思い出に浸れる素敵な小物たちに囲まれながら、これまでの軌跡と、これからの希望を語り合ってほしい。

「私が初めてブライダルコーディネーターとして携わる挙式ですから、記念になにかをして差し上げたかったんです」

「それ、ぜんぶお前の自腹か?」

「もちろんです。海の小物を扱っている専門店に足を運んだり、ネットで探したりして、気に入った物をあれこれ買い込んだんですよ」
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