バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
かなり粘着されていたらしい花婿様はすっかり逆上して我を忘れていたけれど、挙式当日に女性トラブルが発生したことが公になれば、両家にとって大スキャンダルになってしまう。
ここは極力、穏便に済ませた方が賢い。
「亜寿佳。さすがにそのインクまみれの惨状でウロウロさせるわけにいかないから、今日はもう本館に戻れ。俺の部屋で待機していろ」
副社長の大きな上着を着ている私に、彼が指示を出す。
いや、どちらかと言うとインクの汚れより、あなたに引き千切られたブラウスの方がよっぽど惨状なんですが。
という事実はさておいて、私は男性スタッフに連れられて行く女性の後ろ姿を眺めた。
さっき花婿様に向かって鬼女のように喚き散らしていた様子とは打って変わって、彼女は両肩をガクリと落とし、フラフラ覚束ない足取りでスタッフに支えられながら歩いて行く。
その姿を見送りながら、私は副社長にひとつの提案をした。
「私も書斎の間に行きます」
「だめだ」
間髪置かずに却下されてしまったけれど、私は食い下がる。
「副社長はしばらく時間を置いて、彼女を冷静にさせたいんですよね? 同じ女性の私がいた方が、彼女の気持ちも落ち着きやすいと思います」
「だめだ。なにかあったらどうする」
険しい口調と表情の陰に、私の身を本気で案じてくれている気配が窺える。その気持ちを本当にありがたく思いつつ、それでも私は主張した。
ここは極力、穏便に済ませた方が賢い。
「亜寿佳。さすがにそのインクまみれの惨状でウロウロさせるわけにいかないから、今日はもう本館に戻れ。俺の部屋で待機していろ」
副社長の大きな上着を着ている私に、彼が指示を出す。
いや、どちらかと言うとインクの汚れより、あなたに引き千切られたブラウスの方がよっぽど惨状なんですが。
という事実はさておいて、私は男性スタッフに連れられて行く女性の後ろ姿を眺めた。
さっき花婿様に向かって鬼女のように喚き散らしていた様子とは打って変わって、彼女は両肩をガクリと落とし、フラフラ覚束ない足取りでスタッフに支えられながら歩いて行く。
その姿を見送りながら、私は副社長にひとつの提案をした。
「私も書斎の間に行きます」
「だめだ」
間髪置かずに却下されてしまったけれど、私は食い下がる。
「副社長はしばらく時間を置いて、彼女を冷静にさせたいんですよね? 同じ女性の私がいた方が、彼女の気持ちも落ち着きやすいと思います」
「だめだ。なにかあったらどうする」
険しい口調と表情の陰に、私の身を本気で案じてくれている気配が窺える。その気持ちを本当にありがたく思いつつ、それでも私は主張した。