痣
龍は元々私のバイト先の常連さんだった。
私が高校を卒業してから5年間お世話になっているそこは、夫婦で経営しているちょっとボロい居酒屋さんで、平日の夜はだいたいそこでバイトをしていた。
ちょうど1年前。
龍は友達と2人、スーツ姿で店に来た。
「いらっしゃいませ」
「とりあえず、生2つ」
「かしこまりました」
ジョッキにビールを注ぎ、おしぼりと御通しをお盆に乗せて、カウンター席に座る2人の元へ向かった。
あとは、注文を取って、料理とお酒を運んで、
特別なことは何もしていない。
しかし、その日から龍は最低でも週1回、多い時は週3回、うちの店に飲みに来る様になった。
友達を連れて来る時もあれば、1人でカウンター席で飲んでいる時もあった。