一体どれくらいの時間が経っただろうか。

彼の拳が、まるでグローブをしてるかの様に大きく腫れていて、床に転がっているフライパンは元の形よりも縦長に変形していた。


ベッドの上は、赤い血で広がっている。



「ほら。止血するから腕捲って。」


さっきまで、暴れていた彼がまるで別人の様な声色で近付いてきた。
そして、私の右腕を取り、服の袖を捲る。


右肘には深くえぐられた様な傷があった。


そこから流れている血に自分では気付かない程に、全身が痛くて。


でも、それ以上に、


冷静に私の看病をし始めた彼に、やっと恐怖を覚え始めた。



「・・・舞華。もう俺をイラつかせないでくれな。」



こうなった事、

全て私が悪いと。




そう言いたげな表情で彼は微笑む。


私よりも辛そうに。


まるで自分が殴られたみたいな顔で。



「・・・愛してるよ」




そう言った。


彼の名は、夏川龍斗(なつかわりゅうと)





「龍、もう別れよう」



私が生まれて初めて本気で好きになった人だった。












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