私たちは大人になった
『あいつが言ってることを本当にするか』
その言葉の意味を理解するのがワンテンポ遅れた。
『……え』
『あいつが喚いてただろ。他に好きなやつがいるんだろうとかなんとか』
『言ってた、けど』
『お前の感情はとりあえずおいといて、一緒にいてやる。休み時間も、帰りも』
え、と戸惑いを見せる間に優は決めたようでまっすぐな視線が私を捉える。
『チャイムなる。ほら、いくぞ』
『あ、うん』
促されて歩き出す。
流された私の返事も待たずに決定事項となったそれ。
追いつかない思考でそれでも感じるのは安心。
教室の扉を開けてそこに彼の姿がなかったことを確認すると優は『あとで』と、一声かけて席に着いた。
ちょうどチャイムが響いたので、私も後に続き自分の席に着くと少なからず好奇心の眼差しにさらされる。
そこでハタと気づいたのだ。
優には大切な“マネージャー”がいるはずだ。
ずっと一緒にいるだなんて、彼女がよく思うはずがない。
せっかくの優しさだけど断るしかない、と少し気落ちしてその時間を過ごした。
自分で蒔いた種だ、どうにかするしかない。
わかっているのにどうして良いのかわからない。
やがて先生が教室にやって来て、授業が始まる。
筆箱からシャーペンを取り出そうとして、先程の手紙が目についた。
そっと取り出して開くとさっきとは何にも変わらない“大丈夫か?”の文字。
ふぅ、とひとつ息を吐いて私はその手紙を生徒手帳に挟んだ。