私たちは大人になった
授業が終わるや否や私は優の席にいく。
『優、ありがと。でも大丈夫。マネちゃんと仲良くしてよ』
矢継ぎ早に言うだけ言って『おい、』と話しかけられたのを振り切って私は女子トイレに駆け込んだ。
ずるい私は“優じゃない誰か”が助けてくれたら良かったのに、と思わずにはいられなかった。
なんで親友と呼べるような友達も作れなかったの、私。
問題をすり替えてみても現実は当然変わらない。
生徒たちの騒がしい声が遠ざかり、もうすぐ休み時間が終わる頃かと、時間を確認する。
行かなくちゃ。
授業をサボるという選択は頭の中に掠りもしなくて、立ち上がり、教室に戻ろうと歩き出す。
そしてトイレを出たすぐのところで私は彼に捕まった。
『なんで、無視するの?』
グイ、と捕まれた手から背中に震えが走る。
『ど、したの?授業、始まる、よ?行かなきゃ、ねぇ』
捕まれた手は強さを増し、ぎゅうぎゅうと痛いくらいだ。
わずかに廊下に残っていた生徒たちはチラチラとこちらを見ながらも自分達も授業に遅れてはいけないからと足早に去っていく。
やがてそこは私たちだけになる。
静まり返った廊下に彼の怒りと私の恐怖だけが浮かぶ。
その沈黙を破ったのは規則正しい機械音。
鳴り響くチャイムを合図に彼はそのまま私を引きずり歩き出す。
捕まれた手が緩む気配はない。