勇気のカケラ -いじめに負けないで-


ーーーそういうことだったんだ。


私はざっと辺りを見回す。


真面目に素振りをしたり壁打ちをしている人は、大勢いる1年生部員の中で僅かに数人。

菜美の言う通り、そのほとんどの部員達が座って談笑をしたり卓球とは関係のないことを行なっている。


平井先生と菜美は最初、”自主練をしている”と言ったのに、実際には座って話をしている春奈達を見て私は疑問を持っていた。

だけど、菜美達の話を聞いて納得した。



「そういうことだったんだ……。それにしても、走ったり素振りしたりけっこうハードなんだね卓球部って。

それに、こんなに外で練習してるのに全然卓球台を使わせてもらえないんだね。厳しいなぁ」


そう言うと、菜美達はうーんと小さく顔を見合わせた。


「全く使えないって訳ではないんだけどね…。まぁその辺りは後々分かってくると思うから、また説明するね。

それ以外に私達が卓球台を使えるって言ったら休憩時間くらいかなぁ」



「休憩時間?」



休憩時間に卓球台を使えるって、それじゃあ休憩時間じゃないよね?

よく意味が分からずに首をかしげると、菜美達は苦笑いを浮かべた。


「そ。休憩時間っていうのは、先輩達の休憩時間ね。先輩達が休んでる隙を狙って、私達1年生は空いてる卓球台を使うの。それでも卓球台の数は限られてるから、休憩時間は1年生の台取り合戦だね。

だから実質私達1年生に休憩時間はないんだよ。まぁこうやって自主練の時に休んだりしてるけどね!」




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