勇気のカケラ -いじめに負けないで-
「美術部はすごい楽しかったんだけど、心のどこかで体を動かしたいって気持ちがあってさ。悩んで悩んで、転部するなら夏休みに突入する前だなって思ったんよ」
体を動かしたい。
そう思う気持ちは、美術部に入部して間もなく感じ始めた。
小学校の頃からの一番仲のいい友達が美術部に入るからと、流れで入部することにした美術部。
元々絵を描くのは好きだし、仲のいい友達が一緒だしで私は入部することに何の迷いもなかった。
しかし、私は入部して間もなく違和感を感じるようになってきた。
美術室で絵を描いている時。
放課後、廊下で友達と喋っていた時。
その時に聞こえてくる運動部の人達の掛け声、一生懸命体を動かすその姿を、私はいつしか食い入るように眺めるようになっていた。
そして思ったことは、私も体を動かしたい。
絵を描くことも好きだけど、体を動かすことも同じくらい好きだった。地元で行われるロードレース大会には毎回といっていいほど参加していた。
それでも悩んだのは、美術部に大切な友達の存在があったから。
転部までして運動する必要があるのか?
転部をしたら成績表に書かれるんだよ?
根気がないと思われて、高校受験が不利になるとどこからで聞いたことがある。
そんなリスクまで背負って転部するの?
美術室には大切な友達がいる。
二人で一緒に入ったのに、私はその子を置き去りにするの?
美術部にいれば楽しい時間は保証される。
けど転部をした先がどんな雰囲気かは未知数。
わざわざそんな未知の世界に飛び込む必要ある?
でも私はーーーーー。
悩んで悩んで悩みまくった。
その結果、私はどうしても体を動かしたいという気持ちが捨てられず、転部届を手にすることに決めたのだ。