颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
そこそこ賑わうスーパーで買い物を済ませ、居住階エントランスに向かう。自動ドア一枚隔てた通路は無音で空気も澄んでいて、床は大理石調で脇には観葉植物も適度に置かれ、壁には油彩画が飾られていた。

高級で厳かな雰囲気に思わず背筋が伸びる。私みたいな一般庶民もいるだけでセレブになった気分だ。

エントランスの自動ドアが開くと、魔法のように正面のエレベーターも自動で開いた。既に目的階のボタンは自動で点灯している。居住階最高階の42階。スーパー袋で両手が塞がっている桐生颯悟の代わりにボタンを押すつもりでいたのにその必要はないらしい。噂の非接触式キー。荷物で手をふさがれていても自宅のドアまではノータッチで進むことができる。

ホテルのような内廊下を歩いて角部屋で足を止める。桐生颯悟は手にしていたスーパー袋を私に手渡す。鍵を取っ手にある鍵穴に差し込み、ドアを開けた。さすがに部屋の解錠は非接触式とはいかないようだ。玄関のダウンライトが自動で点灯する。

スリッパを棚から出して、桐生颯悟は再び荷物を持つと奥へ進む。意外と優しいところはあるらしい。

細長い通路を進むと広いリビングがあった。カウンターキッチン、ダイニングテーブル、L字型の革張りのソファ。壁はオフホワイト、床はダークブラウン、青や黄色のクッション、ピクチャーレールに掛かるのはデザイン画。北欧を意識した部屋だった。ため息がこぼれる。


「キッチンにあるものは好きなように使って。オレ、部屋で仕事してるから。出来上がったら呼んで」
「はい」


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