颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
だから母はすごくモテる。

子どものころからボーイフレンドはたくさんいて、学校から一緒に帰ってくる男の子はその日で違った。バス通だった高校時代、彼女が乗っているバスに向かって他の行き先のバス待ちをしている男の子たちが手を振る、なんてこともしばしばだったらしい。よりどりみどりで選べたはずなのに、母は特定の彼氏はずっと作らずにいた。

そんな母を妻として射止めたのは麦畑で作業していた父で……まあ、2人の出会いは追々。

鼻歌を歌いながら段ボールから取り出した私の服を体に当て、似合うかしら、と鏡を見やる。

母がご機嫌なときはたいていナンパされたときだ。


「母さん、またナンパされた?」
「うん。ここに来るまでに5人。歳言ったらみんな逃げてった。その驚いた顔ったら、もう最高~♪♪」


フフンと鼻を鳴らしたあと、母は眉をひきつらせ、私を横目で見た。


「それに比べて……。私の娘なのになんでこうも男の気配がないのさ? 30にもなって独身だなんて」
「まだ29だってば」
「やっぱりこういうのは親がセッティングしないとダメだって、知り合いに言われてさ。どうだった? 写真見たでしょ?」
「じゃあ、あれはお見合い?」
「そうだよ。父さんの知り合いの息子さん。35歳、お勤めは宮城県庁。今、出向で東京にいるんだけど、いずれは仙台にもどってくるんだって。親が仙台市郊外に広い土地持ってて、そこに家建てる予定」
「ん? それって親と同居ってこと?」
「ううん。息子に土地を相続させて、若夫婦だけ住まわせるって」
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