颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「ええっと、あの、颯悟さんは駄目でしたか? 性格の不一致より性の不一致のほうがダメージは大きいと聞きますし。颯悟さんのご期待に添えなかったなら、潔く身を引きますんで。胸もないですし、その……」
「もう、黙って。疲れたから寝るよ」
「あ、はい。じゃあ部屋にもどりま……」


自分の部屋にもどろうと足をベッドから下ろそうとしたら、ぐいと腰をつかまれた。バランスを崩して倒れ込む。

むぎゅう。抱き枕のようにきつく抱きしめられ。


「ダメ。ここにいて。ずっと朝まで」
「じゃ、シャワーだけでも」
「シャワーもダメ。みのりの汗の匂い、すごくそそるから」
「えっと、それって……」
「もう一回、しよ?」
「寝るんじゃなかったんですか?」
「前言撤回。欲しい」
「いや、でも、その、もう腰がですね」
「煽ったのそっちでしょ? 今度は優しくするから、ホントに」


ちゅ。こめかみに落とされたキス。それはいつもより優しくて、なんだか心に響いた。嬉しいような切ないような。幸せなはずなのにどうして心が疼くのだろう。

そんなことを考えながら、桐生颯悟の胸に体を委ねた。








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