颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ちょ、なに、このモデル男?
見た目に反してすごく失礼だ!
「ま、役員専用エレベーターと一般用エレベーターの区別もわからないみたいだしね?」
「すみません。今日から配属になったから」
「それでも間違う? オレに指摘されるまで気づかないなんて」
ふっ、と鼻で笑われた。
「そ、そんなこと言うなら私、帰ります! なんでアナタの恋人役をやら……ひゃあ!」
私の耳もとを腕がかすめて。
背後の鉄扉がズシンと音を立て、背中に響いた。
目の前にはモデル男の端正な顔。
人生初の壁ドンされた。29年生きてきて初めての。
モデル男……桐生颯悟と名乗るイケメンは至近距離で私の瞳を射抜くようにみつめる。
「アナタじゃなくて、颯悟さん。いい? キミはオレの恋人。しかもオレにメロメロに惚れてる家庭的なバリキャリ。言うこと聞かないなら支社に」
「わ、わかりました」
「じゃ、いくよ? 本番」
「本番?」
桐生颯悟は鉄扉を開けると私の手首をつかんで引っ張った。再びふかふかの絨毯に足元を取られそうになりながらも、なんとか桐生颯悟に追いつく。
いきなり彼が立ち止まったので、私は彼の背中に顔をぶつけた。
痛い……。
コンコン。彼はドアをノックした。
ドア脇のプレートには社長室と印字されていて。
「社長?」
「いいから。いくよ?」
桐生颯悟の顔は精悍な顔つきになっていた。きりりとした瞳、眉。男性ファッション雑誌から抜き出てきたようなスタイル。
ドアを開くと、彼は私の腰に手を当てた。ブラウス越しに彼の指が当たる。
「ちょっ……☆§●※▽■〇×?!」
脇腹に痛みが走る。つねられた!
「失礼します。社長」
「ああ、お前か。待っていたよ」