颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ペーター徳田はにこりと笑うと私の手首をつかんだ。そして彼の部屋の方へ私を誘導する。


「一緒に作業しましょう。隣でしたほうがお互い確認ができて効率もいいですし。ね?」
「え……まあ、はい」
「じゃあ、こっちに僕が座りますから、麦倉さんは隣に。この資料の選別をしてください」
「はあい」


ホテルの部屋にある一般的なデスク。決して広くはない幅にふたり並ぶと、肩はぶつからないまでも肘が触れあいそうな距離。図らずもペーター徳田の息づかいも聞こえてしまう。ペーターはなんにも感じないのかカタカタカタカタとキーボードを叩いている。大きな手のひらに長い指。桐生颯悟とは違う男の手だ。あ、指毛が生えてる。なんかかわいいなあ。

なんて思ってると、そのキーボードを打つ指がピタリと止まった。
真横から黒縁眼鏡越しに見つめられていた。


「なに見てるんですか?」
「打つの速いなあって」
「僕の手を見てたでしょう? 手フェチですか?」
「ええ、まあ。すみません、仕事しますね……へ?」


視界の隅から徐に手が上がってくる。ペーターの手だ。その手は私の顔に向かい、頬に添えられた。
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