颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
朝ごはんを終えて出社する。噂になると面倒なので私は桐生颯悟より先にはむはむカフェを出発した。もうすでに他のお客さんはいたけれど、少しでも長く早百合さんのそばにいさせてあげようという私の心配りだ。
感謝したまえ、桐生颯悟。
オフィスのドアを開けると空気がくぐもっていた。窓側のデスク、佐藤課長がくわえ煙草でデスクに肘をついていた。緩んだネクタイ、しわだらけのシャツ、無精髭。完徹残業だろうか。わが広報部はポスターやCMを企画作成する部署で、外注もするが自分たちで作り上げることもある。
「課長、締め切り間近の案件でも?」
「あ? 麦倉。早いな。ネット広告のデザインなんだが、お前ならどうする?」
佐藤課長は、ずい、と大きな手でモニターを私の方に向けた。そこには3つの画像があった。女性とプードルがじゃれあう画像だが全て構図が違う。
「なんの広告ですか?」
「個人事業主向けのデータ保存アプリだ。会社としてはあまり力は入れていないからCMは自社制作なんだが、女と犬ってのがなあ。安直過ぎないか?」
「そうですね。イメージ訴求では効果も見込めないですね」
「お前、マーケティング学部卒だろ。なんかねえか?」
「個人事業主のタイプにも寄るかと」
「なぜそう思う?」
「初めてアプリを取り入れる企業か、既に導入済みのと入れ替えなのか、で変わりますし」
「そうか。ありがとう。ヒントもらえたわ。さすが仙台でブイブイ言わせただけのことはあるな」
「ブイブイって。課長、古いです。完徹ですか?」
「ああ。他にも決済案件抱えててな」