颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ぷう、っと煙を吐き出すと長い指でタバコを携帯灰皿に落とし込んだ。バツイチという噂を仙台の部長から聞かされていたけど、その薬指にはくすんだリングがある。そのシンプルさはどう見ても結婚指輪だ。バツイチはバツイチでも再婚したクチとか?
長い髪をかき上げて流し目でモニターを見つめる。
謎だ、この妙な色気も。ミステリアスな上司。
ふと、彼がこちらを見上げる。もちろん流し目で。
「なんだ? 俺の顔になんかついてるか? それとも俺に惚れたか?」
「いえいえ」
「即答か。ああそうだ、麦倉。デザインの案件は来週からお願いする。その手でブイブイ言わせたいだろうけど、オアズケだ」
「だからブイブイは古……っ?」
佐藤課長は突然、私の手をすくうと手の甲にチュッとキスをした。
「お前の今日のタスクはデスクに置いといた。とりあえず今週は他部署と顔をつないでおけ。ん? 手じゃ物足りないか? なら唇に……って冗談。麦倉ってウブだな。じゃあ」
課長は立ち上がるとポンポンと私の肩をたたき、オフィスを出て行った。
東京の男はどいつもこいつもキスが平気らしい。ここは海外か?
*―*―*
定時になって、待ち合わせの場所に向かった。タワーマンション3階のコンシェルジュカウンター前だ。桐生颯悟は先に来てコンシェルジュから荷物を受け渡してもらっているところだった。