颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「荷物、持ちます」
「いいよ。仮にも女の子なんだから、仮にも。持つならオレの鞄と鍵を持って」
鍵と鞄を預かり、エレベーターに乗る。
コンシェルジュの手前、にこにこと笑う桐生颯悟。しかし扉が閉まったとたん、ぶすくれた。
「その鍵はキミに預けとく。鍵がないと部屋に入れないのもあるけど、出るときも必要なんだ。エレベーターで1階に降りることはできてもエントランスの自動ドアが開かないんだ、セキュリティの都合上ね。するとオレがいちいち解除しなくちゃいけないから」
「わかりました」
「その鍵があればバーや図書ラウンジ、フィットネスクラブも利用できる。上階の共用スペースね。バーとフィットネスクラブは有料。図書ラウンジは無料だから行ってみれば? タワーマンションの最上階なんてキミみたいな庶民が行ける場所じゃないからね」
「わ、か、り、ま、し、たっ!」
部屋に入ると桐生颯悟は荷物を抱えたまま、リビングを素通りした。とあるドアの前で顎をしゃくる。昨日、桐生颯悟が入った隣の部屋だ。私はそのドアを引き開け、ふたりで中にはいる。
うわあああ……。
カーテンは開け放たれていたから景色がダダ漏れ。
正面は足元まで一面のガラス張り。思わず駆け寄り、ガラスに手と額を突いた。眼下に広がる夜景に息を飲む。色とりどりの光の粒たちが惜しみなく輝く。