颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)

混んでるなんて嘘だった。お客さんはたくさんいるけどウェイティングがかかるほどじゃない。その証拠に私と桐生颯悟は窓側に設置されたカウンターに通された。つまりは遠慮していた私に服を着せるための嘘。注文したギムレットもカシスソーダもすぐに届いた。

足元に広がる夜景。奥は暗い。海だ。その静かな空間を船の明かりがゆっくりと泳いでいる。なんか、想像以上だ。


「うっとりして、そんなに嬉しい?」
「はい。仙台も結構都会だと思ってましたけど、ここまでキラキラしてないっていうか。それに男の人とデートも久々ですし」
「オレはデートのつもりはないけど」
「それはそうですけど。腕を組んでもらって、こんなお洒落して、ちょっとドキドキするっていうか」
「それはオレも、かな」


はい? 横に並ぶ桐生颯悟の顔を眺める。照明の落とされた空間の中でも彼が笑っているのはわかった。このタイミングでこんな笑顔を見せられたら……私。

膝の上に乗せていた手を握る。だめだ、好きになっちゃいけない。
だってこの人には好きな人がいる。好きになったら自分が惨めになるだけだ。

そう自分に言い聞かせているのに、桐生颯悟は私の手に、手を重ねた。手の甲に伝わる桐生颯悟の体温。しかも、そのまま指を折り込み、組んだ。恋人つなぎ。彼の顔を見れば、いたずらっ子の笑みを浮かべていて。

指に熱を感じる。

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