颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
トントン、というノックの音で目が覚めた。いつの間にか眠っていたらしい。悶々として、何度も寝返りを打って、桐生颯悟の部屋との壁に切なくなって、また寝返りを打って……を繰り返していたから。
壁掛け時計の示す時刻に慌てて飛び起きる。遅刻する?! でもすぐに平常心にもどった。ここは桐生颯悟のマンション、徒歩10分で会社に行ける。
「みのり、起きてる? 起きてたら返事して」
トントン、トントン。優しく繰り返されるノック音。落ち込んでいる誰かの背中にそっと手を添えるみたいな叩きかた。もう怒ってないのかな……。いや、許してくれたからではなく、針が振り切れてどうでもいい状況だからやりなげに、かも。
昨夜ケンカしてあれっきりだった。相当怒っていたし、今も怒ってるに違いない。
ベッドから降りてのそりのそりとドアに向かう。私もトントンとこちらからドアをノックした。
「お、起きました……けど」
「みのりは、目玉焼きとオムレツ、どっちが好き?」
「オムレツです」
「そう、わかった」
それだけを言うと桐生颯悟の足音がキッチンのほうに消えた。ああ、きっと追い出されるんだ。もうキミに付き合い切れない、まだ祐理恵さんのほうがマシだから彼女と結婚する!、とか言われるんだ。
ん? いま、みのり、って言わなかったか?
桐生颯悟が私をみのりって……。