颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)

「キミにもわかるの、そのグラスの価値」
「江戸切子ですよね」
「菊篭目文様って言って高度な技術が必要とされる模様。ペアで30万円だから大したことないけど」
「そそそそんな高価なもの! 絶対割りません!」
「オレだって割る気はないよ。職人さんが丹誠込めて作ったものだから。キミ勘違いしてるようだけど、資産家が全員、モノを湯水のように捨てるんじゃないから」
「そうです、ね」


言われれば桐生颯悟はポイポイものを買ったり捨てたりしない。食べ物だって残さず食べる。失敗作のコロッケも食べてくれたし。部屋もいたってシンプルだ。確かにひとつひとつは高級で一流品ばかりだけど必要なもの以外は置かないから。

江戸切子に口を付けて桐生颯悟がワインを飲む。白い喉仏が色っぽくこくりと動く。彼の目線はブルーチーズの蜂蜜がけ。


「ねえ、このゲテモノ。ホントにおいしいの?」
「はい。女子会ではみんな注文してましたよ」
「仙台のずんだ女子会でしょ?」
「もう。いいから食べてください」


私と桐生颯悟の間にあるマグに手を伸ばした。カトラリーが立てられた、それ。固い金属のはずなのに指先に触れたのは暖かくてちょっと柔らかい。


「あ……」
「えっ……☆§●※▽■〇×?!」


触れたのは桐生颯悟の指先。
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