颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
お互いに手を伸ばしていてカトラリーの隙間でぶつかった。とっさに手を引っ込める。桐生颯悟も同じように手を元の位置にもどしていた。


「す、すみません。バカがうつりますね」
「ホント。困る」


桐生颯悟が先にフォークを取ってから私はカトラリーに手を伸ばした。桐生颯悟の頬が赤いけど気のせいだろう、まだ飲み始めたばかりだ。疲れて私の視覚が誤作動を起こしている。桐生颯悟は黙ってブルーチーズを口に入れた。

洋楽のBGMだけが部屋に響いた。あれ、この曲聞いたことがある。テレビドラマの挿入歌で。あのときはなんとなくノリで聞いていたけど、この歌詞、片想い? 今まで聞き取れなかった英語の歌詞がすんなり耳に届く。

今日の特訓のせいかな。一日で耳って覚えるものでもないけど。


「颯悟さん。この歌、片想いの曲だったんですね」
「歌詞、わかるの?」
「今日は聞こえるというか。今まで単語が聞き取れてなかったんですけど」
「それはキミに素地があるからだよ。一朝一夕で耳は作れないから。これ、おいしいね。キミも食べなよ」


サイコロ状のそれを食べてはワインを煽る。メルローの渋みはさらりとしていて、ブルーチーズのコクとよく合う。
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