颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
私のカバン? いやいや。こんな三流品。それにいつも持ってるし、このカバン。

じゃあ、佐藤課長の手? 指輪? それとも課長の太もも?

目をまんまるにしたまま、動けないでいる桐生颯悟。

颯悟さん?、と声をかけると魔法を解かれたように動き出した……当然、ぶすくれた顔で。


「帰ろうか。おんぶするよ」
「いえいえいえいえ、滅相もない」
「なに、佐藤課長にはできてオレにはおんぶできないの?」
「そういうわけじゃ……はい、わかりました」


いたしかたなく中腰になった桐生颯悟の背中に被さる。私をおんぶすると佐藤課長に挨拶をした。佐藤課長も90度に腰を曲げて礼をすると来た道をもどろうとする。

桐生颯悟もマンションに向かおうとしたとき、佐藤課長は振り返った。


「颯悟副社長。ちゃんと背負わないと落ちますよ、麦倉みたいなフツーの女は」


佐藤課長が珍しく、いや、初めてかもしれない、まっすぐに強い視線を向けてきたのは。いつもの流し目とは違う、鋭く突き刺すような目で。言われたのは桐生颯悟なのに私の背筋がぞぞっとした。普段ゆるーいだけに怖い。
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