きっと、君だけ。



「藤咲さんが相手してくれないなら、俺も本でも読もうかな」



本なんてキャラじゃないでしょ、絶対。


心の中でそうつぶやく。



帰ればいいのに、そうしない彼は立ち上がって、おもむろに本棚と本棚の間へと入っていく。



ここには君の好きそうな漫画も、最近映画化した流行りの小説もない。



つまらない資料や本と……つまらない女しかいないのに。



――ガタッ。



私は立ち上がり、彼が消えていった本棚へと向かった。


ミシッと古びた床の音が響く。いつか穴があいてしまうのではないかと思う。



でも私は知っている。こんな床なんかよりも怖い……無造作に並べられた本のことを。



「ねえ……」



彼がいるはずの本棚と本棚の隙間を覗き、何も知らない彼に呼びかけた。



だけど時既に遅し。


彼は自分の背よりも高い位置にある本に手を伸ばしていた。



「あ、ダメ……!」


< 9 / 50 >

この作品をシェア

pagetop