ホワイトデーにおくるのは。
「じゃあ、まずはクッキングシートごと中身を取り出して、まな板の上まで持ってきて」


パウンド型を甘奈が抑えて、俺は指示通りにする。


「じゃあ、クッキングシートを剥がして」


変に破けないように慎重に剥がすと、少しいびつではあるが、形が整った姿が現れた。


「じゃあ、切ってみて」


そう言われて渡されたのは、包丁。たぶんお菓子用の小さめのものだと思う。

しかし、どう扱うんだったけ。

まぁ、為るようになるか。

短絡的に考え、包丁をチョコに入れた。

……。

全然切れない。


「ちょっと! なにやってるのよ」

「え? なんか違った?」

「包丁は斜めに入れるの。あー、もう。つぶれちゃったじゃない。貸して」


甘奈は包丁をぶん取り、ガトーショコラに包丁を入れた。

呪文でも唱えたのだろうか。

俺がやっても全然切れなかったのに、さくさく切れていく。


「中身見てみて」


中を見ると、俺は思わず「おー」と歓声を上げた。

外は少しばかり固い感じに見えるのに、中はとろとろで柔らかそう。


「でも、焼いたにも関わらず、これでいいのか?」

「いいのよ。そういうものなんだから」


なにはともあれおいしそうだし、甘奈も気分が良さそうだ。

そのまま甘奈が一口サイズに切っていく。

そそっかしい俺にはできない芸当を、ただ眺めることしかできない。

甘奈は切り終えると、皿を二枚用意して、それぞれ二つずつ乗せた。

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