ホワイトデーにおくるのは。
あのときだよな、選択肢を間違えたのは……。

ゲームならやり直しが効くんだけどな……。

いやいや、後悔してても仕方がない。


「はあ」


考え込みながら歩いていると、ため息をついていた。


「ちょっと。なにため息なんてついてるのよ」

「え? あー、悪い悪い」


ぼーっとしていたせいか、まぬけな声を出してしまう。


「しっかりしなさいよ」

「おう」

「じゃあね」


元気よく教室に入っていく甘奈を見送りながら、「はあ」と再び大きなため息をついて、自分の教室に入った。



昼休みになって、直也が俺の席まで来て、今日もお米に昆布しか入ってない、素っ気ない弁当を食べ始める。


「直也」

「どうしたよ?」

「ホワイトデーって、どうしたらいいと思う」


驚いたのか、直也は「ブーッ」と吹き出した。

ちょっと唾がかかった。汚い。


「夏川ちゃんのことか? お前、そんなこと俺に聞いてどうするよ?」


だよな、はははは……。

そう言ってもかっこつけて、一人で考えて失敗はしたくない。


「お願い、頼む! せめてなにかヒントをくれ!」

「いや、俺にもわからんぞ」

「一生のお願い!」

「小学生かよ。んじゃ、放課後に渉にでも聞いてみようぜ。あいつなら、同じクラスだし、なにか知ってるかもよ」

「おー! そうだな!」


よかった。俺一人、八方塞がりの中、ようやく手がかりを見つけられそうな気がしてきた。

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