ホワイトデーにおくるのは。
放課後になり、隣の教室へ。

甘奈が教室にいないのを確認してから、入室する。

ダンジョンゲームで敵に見つからないように進むみたいだな。

いや、甘奈は敵じゃなくて、味方なんだが……。


「よー、渉」

「直也に翔、珍しいな、どうした?」


廊下側の後一番ろの席を陣取っている渉は、まだ帰り支度を整えている様子もなく、座っていた。


「それがこいつ、夏川ちゃんにホワイトデー、どうしたらいいかわかんないらしくてな」

「いや、俺にもわからんぞ」


今日二回目のわからんぞ。

その言葉に俺は一瞬ピシッと固まった。


「まいったなぁ」

「翔、お前彼氏なのにわからんのか?」


返す言葉もない。


「頭の中がホワイトでーすなぁ」

「渉。お前うまいこと言うなぁ」

「だろ?」


がはははは、と笑い出す二人。

全然うまくない。

なんとなくこじつけている感じもあるし。

『バカにしやがって』と悔しがる。

しかし、こいつらに当たっても仕方がない。

これならまだRPGの序盤の街で『武器や防具は装備しないと、意味がないよ』と言ってくれる人のほうがましだな。

最初は助かるし、今でもうっかり忘れていて、気がつくこともあるし。


「それなら、川野(かわの)さんに聞いてみろよ」

「誰?」

「夏川さんと同じ中学だった女の子。俺が呼んでやるよ。おーい、川野さーん」


渉の大きな声の先に視線を向けると、眼鏡をかけた小さめの女の子がこちらを向いた。


「なによー」


意外と威勢のいい声が返ってきた。


「ちょっと来てもらってもいい?」


そう言われると、川野さんはしぶしぶながらこっちに来た。

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