ホワイトデーにおくるのは。
「なによ。むさ苦しいのが集まっちゃって」


腕を組みながら、強気な態度でいる川野さんに、俺は少し恐がってしまっている。

初対面なのに、いきなり頼みごとというのは、いささかまずいか?

甘奈のときは大丈夫だったが、甘奈の場合は、恋愛シミュレーションゲームでいうところの好感度がお互いに高かったからな。


「いや、こいつ夏川さんの彼氏なんだけどね。ホワイトデーにどうしたらいいのかわからんらしい」


渉の説明に、川野さんは俺をじろじろ見始め、顎に片手を添えた。

なんだか面目ないのもあるが、視線が恐い。


「あー、はいはい。あんたが甘奈の恋人なのね。甘奈から聞いているわ」


感心してもらったようで、声のトーンが少し上がった。

甘奈、俺のこと他人に話していたのか。

一緒にいない時間が長くても、俺のこと考えてくれているんだな、と心中喜んだ。


「あんたそれくらい自分で考えなさい、と言いたいとこだけど、初対面の私を尋ねてくるなんて、相当行き詰まっているみたいね」

「はい……」

「んー……、甘奈ねぇ……」


川野さんは考えてくれてる様子。

状況を把握してくれてる様子だから、話が早くて助かる。

それにしてもよくわかるな、行き詰まってるって。

これが女の勘というものか?


「私にもぶっちゃけ言うとわからないけど、女子は男子と違って、結果よりも過程を重視するからね。甘奈も例外じゃないはず。私にも色々話してたし」


え? そういうもんなの? 女心はわからんなぁ。

過程……。

ともかく一応ヒントは得た。


「ありがとうございます、川野さん」

「いや、なんもしてないけどね。まぁ、甘奈が喜ぶところ見せてよ」


背中をバシッと叩かれた。

男勝りなところがあるな。

ちょっと背中痛い。

声もパワーも強いな、川野さん。

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