ホワイトデーにおくるのは。
丸二日経ったのに、なにも浮かばなかった。

父さんと夕飯を食べながら、心ここにあらずといった具合に、表情も浮かばなくなっていた。

考えにふけると、夕飯の味わいがなんとなく薄く感じる。

これ以上あてはないし、どうしたものか。


「辛気くさい顔してどうした?」


早々に夕飯を食べ終えた父さんが聞いてきた。


「もう食ったの?」


父さんは空になった食器をシンクまで持っていき、「ああ、ごちそうさま」と言いながらまた戻って座った。


「それで、どうしたんだ?」


みそ汁を一口飲んでから、俺は悩んでいることについて、聞いてみることにした。


「ホワイトデーのことなんだけど……」

「お、翔、チョコもらったのかぁ。よかったなぁ」

「あー、うん」


父さんが妙にぐいぐい来るせいか、いまいち会話が噛み合わない。

こんなこと滅多にないんだけどな。

父さん、もしかして喜んでるのか?


「どうしたらいいかなって。女の子は過程が好きだって言うから、それを基に考えてるんだけど……」

「あぁ、そうだな。母さんもそうだった」


そう言って父さんは、棚の上に置いてある、生前の母さんと三人で写っている写真に目を向けた。

懐かしむような、泣き出したくなるような、複雑な表情をしている。

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