浮気の定理-Answer-
「うまい……」


そう呟いて、もう一口食べてみる。


きっと普通のお粥に違いないのに、彼女が作ってくれたってだけで、2割増し美味しく感じた。


まだ温かいそれは、彼女が帰ってしまってから、それほど時間が経っていないことを意味する。


ふいにお粥がさっきよりもしょっぱく感じて気づいた。


涙が口の中に入ってきていることに……


鼻の奥がツンとして、喉がつまる。


熱のせいだ……


弱ってるときに、こんな気持ちに気づいたから……


手のひらで涙を拭って、最後の一口まできれいに平らげる。


薬を手にとり口の中に放り込むと、水と一緒に飲み込んだ。


これでまた眠れるはずだ。


今はまだ現実から離れて眠りにつきたい。


トレーをサイドテーブルに戻してベッドに横になると、しっかり目を瞑った。


瞼の裏に映るのは闇だけだと思ったのに、さっきの彼女の間近で見た顔が浮かんでくる。


一瞬だったけど、彼女もそれに応えたように見えたのは、僕の気のせいだろうか?


ウトウトとまどろみ始めた僕の頭の中では、そんな都合のいい解釈が広がっていく。


そもそも彼女はどうして、うちに来たんだろう?


少しは僕に好意を抱いてくれてたからじゃないのかな?


そんな疑問が頭の中でこだまする。


だけどその答えが出る前に、僕は深い眠りに落ちた。


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