浮気の定理-Answer-
カチャっと玄関のドアが開く音がして、俺は急いで寝室から廊下へと飛び出した。


玄関にはやはり桃子が立っていて、靴を脱ごうとしている。


廊下越しに見る桃子の顔は、ひどく疲れたように見えた。


靴を脱いでふらふらと上がろうとしたとき、桃子は俺に気づいたのかピタッと足を止める。


そのまま恐る恐るといった様子で顔を上げる桃子と、視線が重なった。




「――っ!」




きっと、俺は仕事でいないと思っていたのかもしれない。


目を見開いて驚いたような、それでいて気まずいような顔をしていたから。


俺が口を開きかけたとき、開口一番、桃子はごめんなさい!と叫ぶように言った。




「何度も電話もらってたのに……私……飲みすぎちゃって、気づかなくて……」




おろおろと視線をさ迷わせながら、そう言い訳をする桃子に、俺は確信をつく質問をわざとぶつけてみた。




「朝までどこにいた?」




ビクッと桃子が体を震わせる。


それでも彼女は、ごめんなさいと呟きながら、朝まで飲んでたのと言うだけだった。

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