浮気の定理-Answer-
北川のその後
「ただいま」


廊下の向こうからパタパタとスリッパを鳴らして、待ち焦がれたように出迎えてくれていた妻の姿はもういない。


自業自得とはこのことだ。


それでももしかしたら今日こそ昔のように「おかえりなさい!」と、言ってくれるんじゃないか?


「先にご飯にする?」なんて、決まり文句を笑いながら聞いてくれるんじゃないか?


そんな微かな期待を胸に、俺はしばらくその場で待ってしまう。


それが無駄だとわかってはいても……


シンと静まり返る廊下に、反響するのは自分の声だけだ。


小さくため息をついた後、靴を脱いでリビングへと向かう。


そっとドアを開けると、真っ暗な空間が俺を包み込んだ。


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