浮気の定理-Answer-
水落のその後
車窓から外を眺めると、さっきまでビルばかりだった景色がだんだんと緑色に染まっていくのが見えた。


低い民家や田畑、川や山は、ここが都会ではないことを示している。


あんなに憧れて実家から上京した俺に、東京は何も与えてはくれなかった。


それどころか、ささやかな居場所さえ追われることになった現実に、嫌気がさす。


--あんな女に関わらなきゃ良かった


今でも後悔するのは、その事だけ。


木下桃子への気持ちをさっさと諦めていれば、今頃他に彼女がいたのかもしれないし、あいつの旦那に足元を見られずに済んだのかもしれない。


せっかく東京の大学を出て、一流企業の正社員になれたっていうのに、その地位までぶち壊されたのだ。


粗末なアパート、粗末な食事、会社員として仕事はさほど出来なかった俺でも、ギャンブルでストレス解消しながら、なんとか東京で1人頑張って生きてきた。


このまま実家に帰ることなく、この東京でずっと暮らしていくつもりでいたのに……


車内アナウンスが、あともう少しで俺の育った町に着くことを知らせている。


厳格な父親は地元の小学校で校長をしており、母は専業主婦。


弟は、東京の大学を出たあと教員免許をとり父の後を継ぐように小学校で教鞭をとっている。


すでに結婚をして実家で両親と同居しているだけに、俺の居場所などないことはわかりきっていた。



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