浮気の定理-Answer-
「因果応報ってやつですかね……」


ポロッとつい出てしまったかのようなそんな一言に、黙ったまま耳を傾ける。


「自分がしたことって、自分に返ってくるんだなぁって……最近、そう思うんです」


そう言ってグラスの半分ほど水を飲み干した彼は、ゆっくり息を吐き出すと思いつめた表情でグラスについた水滴を指でこすった。


ポツポツと話し始めた彼の苦しみと後悔。


けれど、それはだんだんと前向きなものに変わっていく。


頭の中で悶々と考えるよりも、話してしまった方が整理がつくのかもしれない。


グラスの水を最後まで飲み干すと、彼は吹っ切ったような笑顔でこちらを見た。


「なんだか辛い時っていつもここであなたに話を聞いてもらってる気がします。おかげで向き合う気持ちになれました。ありがとう」


ただ、話を黙って聞くだけでも、時には役に立つことがある。


「いえ、またお待ちしておりますので」


余計なことをは言わなくても、きっとそれだけで伝わるはずだ。


今度こそ幸せになってほしいな……


そんな思いを胸に秘めて、店のドアを押し開ける彼の背中をそっと見送った。
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