浮気の定理-Answer-
BARにて⑩
「おまたせしました」



強めの酒を注文する客に限って、現実から逃れたいと思っているような気がする。


目の前の客もきっとそうなんだろうと思いながら、それでも同情する気にはなれない。


自分の妻を金で雇った他の男に襲わせる計画をしていたあの男だからだ。


少し前に片割れの男は計画が失敗したかのように店で荒れていたけれど、それが本当ならこの男だってきっとなんらかの問題を抱えてるはずだ。


自業自得だと横目で睨みながら、それでも客は客なのだから丁寧に接っしなければならないのが、接客業の辛いところだ。


さっきから鳴っている携帯のマナー音。


一向にとろうとしないのは、なにか事情があるんだろうか?


残りの酒を一気にあおり、タンっと音を立ててグラスを置くと、男は鳴り止まないそれをようやく胸元から取り出した。



「はい」



ぶっきらぼうな言い方に、微かに聞こえる女性の声。

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