浮気の定理-Answer-


「やったぁ!ママ、パパがいいって!」



嬉しそうに俺の首に腕を巻き付けて、ぎゅっとしがみついてくる。


この感触を重みを匂いを覚えていたかった。


次に会う時にはきっともっと大きくなって、もしかしたら抱っこなんてさせてくれないかもしれない。




「あなたがいいなら……」




以前の俺なら、歩きなさいとたしなめていたのかもしれない。


涼子も昔の俺を想定して、俺に叱られる前に花を降ろそうとしたんだろう。




「ほんとに勇さん、変わったね?」




そう言ってから、遠慮がちにまた口を開く。




「お母さんの……影響、なのかな?」




言ってしまってからハッとしたように涼子が口をつぐむ。


余計なことを言って怒らせたらという思いが見て取れた。


それだけ俺は涼子に対してひどい仕打ちをしてきたんだと、改めて認識させられる。




「そうかもしれないな?おふくろのおかげでいろいろと変われたのかもしれない」




だから素直に、そう答えた。

< 348 / 350 >

この作品をシェア

pagetop