浮気の定理-Answer-
あの頃のことを謝るのは簡単だけど、涼子の心の傷はきっとそんなものじゃ癒されない。


自分が許されることよりも、涼子や花が穏やかに暮らせることこそが、今の俺の願いだから。


形は違ってもまだ家族ごっこをさせてくれるだけありがたい。


一歩あとを歩く涼子の手をそっと掴んで引き寄せる。


一瞬、ビクッと体を震わせたけれど、振り払うことなくそのまま俺の隣に寄り添ってくれた。


自分から繋いだくせに、久しぶりに触れた涼子の手の温もりにドキリとする。





「ありがとう」




いろんな意味を込めてそう礼を言うと、涼子は小さく首を振った。


まだ俺の償いは始まったばかりだ。


調子に乗っちゃいけない、と自分を戒める。


母と親子のリハビリを続けているように、涼子や花とも俺にはリハビリが必要なんだと思う。


それが報われなかったとしても、その過程が大事なんだと、遠慮がちに繋がれた手を見ながら俺は泣きそうになるのを必死にこらえた。








end
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