題名のない恋物語
理紗が俺の名前を呼ぶ。返事はせずにそちらを向くと、はにかみながら
「今日はありがとう。すごく楽しかった」
と言った。
「デート前日にワクワクしたり、お世辞でも可愛いって褒めてもらえて嬉しかったり、緊張して気まずくなったり、目的のない買い物も、映画もすごく楽しくて。そういうの全部、誰かと、涼と共有できたことが嬉しい」
「っ」
「いつもみたいにポテト食べながらとか、休み時間ギリギリまで廊下で話してたりとか、そういうのも私は楽しかったし好きだけど、今日みたいのもいいなあって純粋に思えた。全部涼のおかけだ。本当にありがとう」
柔らかく笑う理紗。俺は辺りが暗くて助かったと心から思ってた。俺今絶対に顔赤い。
だいたい理紗は、いちいちストレートすぎるんだ。
言われ慣れてないくせに、自分は平気な顔して恥ずかしいことを言う。本当にやめてくれ、心臓がもたないから。