題名のない恋物語



波の音よりも自分の心臓の音の方が断然うるさくて、落ち着くために深呼吸もしたけど、それでも熱は冷めてくれなかった。





「……俺も、楽しかった」





ようやく絞り出した声は震えていた。緊張しすぎているのが自分でもわかる。きっと理紗にも伝わっているんだろうと思った。






「…俺、今まで仲のいい女友達くらいにしか理紗のこと見てなくて、でも今日は何度も言うけど雰囲気違くて、それだけでも結構緊張してて。俺のために悩んだり、気遣ってくれたり、真っ赤になったり、そういうの見てたらなんかもう…あーもう何言ってんだろ…」





言いたいことがまとまらない。伝えたいことはただ一つのはずなのに、ぐるぐるして言葉をうまく繋げられない。





「俺、今日のデートは理紗の彼氏に対しての抵抗が少しでもなくなればいいなと思って誘ったんだ。正直いつもみたいな雰囲気で、いつもみたいな話をして、いつもみたいに過ごすと思ってた。でも実際全然違くて、正直やばかった。俺ずっとドキドキしてるもん。今だって、ずっと理紗に。彼氏って存在に抵抗をなくすためなんだから、友達同士よりは恋人同士っぽくデートできた方がいいってわかってるけど、さすがに身がもたねー。俺今本当に死にそう。喋りながら心臓爆発する気がする」



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