題名のない恋物語
「理紗」
「…」
「好き」
「わかったからそんな何回も言わないで」と絞り出すような声が聞こえた。その反応に笑みがこぼれる。嬉しくて仕方ない。可愛くて仕方ない。もっと触れて、何度でも好きだと言いたいくらいだ。
まだ心臓はうるさいけれど、それでも今は嬉しさの方が大きくて、先ほどとは打って変わって心地よかった。
理紗は大きく深呼吸を繰り返しながら少しずつ落ち着いてきたようだった。たまにパタパタと手で扇いで、顔を冷やしている。俺と同じくらい熱いんだろうと思った。
そっと手を伸ばしてその頬に触れると、滑らかなその肌はとても熱くて。俺の行動に少し驚いた様子でこちらを見た理紗と目が合う。
「あのさ」
波の音が聞こえる。少し遠くからは自動車の走る音も聞こえる。心臓の音と、呼吸が聞こえる。交わる視線に、俺は熱がこもっていくのがわかった。
「俺と、付き合ってください」