アラシとナギのパンケーキ
窓際の席では姫君がぺちゃくちゃとおしゃべりをしていました。


「私はね、星さえ綺麗に見えれば、ちょっとの砂があればいいのよ。それなのに、この世にはちっともろくな砂がないわ」


姫君が怒り出すと、その可憐な口からキラキラした砂が飛び出ます。


「海の砂はしょっぱすぎて品がないし、泉の砂は荒削りで落ち着かないわ」


あたりに砂をまきながら、姫君はぶんぶんと尾びれを揺らしました。


「姫君、いつかお探しの場所が見つかりますとも」


ラクダが優しく答えるのを見て、アラシとナギが顔を見合わせました。


「お兄ちゃん、わがままなお姫様の相手をするのも大変ね」


「そうかな。でもあのラクダは姫君が生まれてからずっと一緒らしいから平気かもよ」


アラシがそう言いながら姫君を見つめるラクダを見ます。ラクダの黒い目は夜の優しい闇に似ていました。


「そう? まぁ、ラクダが大変じゃなくても、あのばらまいた砂の掃除は大変よ」


ナギはため息をもらし、パンケーキの生地をフライパンにおとしいれます。
まんまるの生地いっぱいに泡がふつふつ。
やがて次々と弾けてぷつぷつぷつ。


「この泡、まるでパンケーキいっぱいの星ね! 星のまたたく音ってこんな感じなのかしら?」と、ナギはうっとり。
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