たった一つの勘違いなら。
「そうですか? さすがにただの憧れですよ?」
「私もただの憧れから始まったから。望むことすら許されないって思ってたの」
そうなんですね、と奈緒ちゃんが深く頷く。
「ちょっと違うんですけど、私もそんな感じでした。西山は社内恋愛は嫌がってたから絶対無理だよねって」
西山くんもモテそうだから、最初はきっと大変だったんだろう。目移りしなそうな誠実そうな人だけど。
「えー、そこはどうしたの。奈緒ちゃんから言ったの?」
「どっちからというか、誤解があって」
「なになになに、お姉さんに言ってごらん。他にばらす相手もいないわけだから」
「私が課長のことを好きだって西山が誤解してて、とか」
「あれ、なんかどっかで聞いた話に似てるね」
「あ、そうですね」
誤解から恋が始まるってことはそう珍しくもないのかもしれないね。
「なにそこ、女だけで盛り上がって」
ここにも目移りしない男が1人。
「ねえ、高橋くんがどうしてもどうしても恵理花がよかったのはなんで?」
まだ酔ってるのかなぁ、私。人はどうして恋をするんだろう、この人じゃなければと思うような。
「わかんないけどこいつだって思って。ほかに行ってもやっぱりって、そういうのはあるじゃん」
「そうなの?知らない」
同意を求められても私は恋愛経験あまりないからさらっと答えた。
「お前本当に冷たいよな!」
「高橋? どうした?」
私を睨みつけた高橋くんに、やってきた真吾さんが微妙に威圧的に声を掛ける。
「いえ、なんでもないです。橋本が、いえあの橋本さんがちょっと」
へえ、と冷たく振舞いながら完全に楽しんでいる真吾さんと、後ろから冷ややかにそれを見ている西山くん。
なんだかんだと言いながら、真吾さんも楽しそうだった。
このメンバーでまた集まれたらいいな。
2人でいても大勢でいても真吾さんがリラックスできる場所だといい。ここがいつでも。