たった一つの勘違いなら。
「やっぱりおかしいって思ったら、敬語に戻してもいいですか?」

「いいよ、無理にじゃない。課長じゃなくて真吾さんって呼べるようになっただろ?時間かかるのはわかってる」

「はい」

「前にも言った気がするけど、俺はしっかりした詩織だけが好きなわけじゃないよ。むしろ気が抜けてるときのほうがかわいい」

そうかな、しっかりしてない私なんて。騙されやすかったり、気が狂ったようになったり、どの辺りに魅力があるのかよくわからない

「詩織が自信たっぷりになって、偉そうに振舞ってきても、俺は全然平気だよ」

「わかりました。そういう覚悟があるなら、ちょっと練習してみます」

「はい、どうぞ」

「今日はいいです」

「それ、敬語だよ」

「今日は、」

ちょっと言い淀んでから頑張る。

「みんなにおめでとうって言ってもらえてすごく嬉しかった。こういうこと考えてくれるところ、やっぱり大好きって」

「俺も同じ」

ゆっくり唇が重なる。これ以上喋らなくていいように私から積極的にキスを続けたら、気づいたらしい真吾さんが笑っている。

「悪くないな、これ。今日はもう喋らないでいようか」

策にはめられてるようで悔しいけれど、今日は本当にそうしようと、首に腕を回してその口をもう一度塞いだ。



あなたの隣にいる自信が持てるまでもうちょっと時間がかかりそうだけど、大丈夫、私たちには時間がたくさんある。

もう少しだけ待っててください、真吾さん。


THE END



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