素直になれない
「うーん、そういう理由なら仕方ないけど。あの子の日向先生への態度が目に余るって他のスタッフからクレーム出てるのよね……」


はあっ、と大きく溜息をつく川本さんの気持ちも分かる。


八木さん、日向先生の着任早々周りを気にすることなく先生にベッタリらしいし。


日向先生に好意を向ける他のスタッフからすれば面白くないよね。


でも、私はそんな彼女たちを思いやる余裕はない。


離れられるなら、例え八木さんからの申し出が他のスタッフには腹立たしいことでも、私にとっては有難い話だったんだから。


それに先生だって不機嫌な顔をした私が隣にいるより、仕事の効率が上がって結果オーライってものよ。


ふんっ、と鼻をならして、でも……とも思う。


今朝の当直室での出来事を思い出した。


嫌いな相手にコーヒーを入れさせて、懐かしい思い出話をして……。


彼の考えることが全然分からない。





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