素直になれない
だけどあの頃の私はそれが分からなくて。


勉強の邪魔はしたくないからってずっと我慢していたけれど、それも難しくなって……。


会いに行ってしまった。


行かなければよかったと、あんなにひどく打ちのめされることになるのなら、もっと早く自分が勘違い女だと分かればよかったのに。


アパートに一人暮らしをしていると教えてくれた彼から住所は聞いていた。


新幹線や電車を乗り継いで、ようやく彼の住む町の駅に降り立った時は体が宙に浮きそうなくらい高揚して幸せな気持ちでいっぱいだった。


これから会えるんだって、ワクワクしてドキドキして、胸の奥がぎゅんっと締め付けられて。


突然会いに来た私を、彼がどんな表情で出迎えてくれるのか考えると顔がふやけてきそうなくらいゆるんだ。

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