偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
……だが、仕方ない。ここで踵を返すと、却って目立つ。
稍はなけなしの金を払って(カード払いなので、実際にはクレジット会社がしばらくの間、立て替えてくれるのだが)手に入れたワンピとパンプスに心から感謝した。
この姿では、稍があの「ハケンさん」だとは、彼らに気づかれないからだ。
稍は沙知の向かいに腰を下ろした。
ちょうど青山とは背中合わせになる席だ。
……よりによって。
また沙知に対して「殺意」が芽生えた。
しかし、稍は、
…… 顔を見られずに済むから、よかったのかも。
と「前向き」に考えることにし、心の中で振り上げた「鈍器」をそっと下ろした。
「さっ、呑みましょう!時間がもったいないですっ……とりあえず生ですか?」
稍はこくりと肯いて、足元の籐籠の中へサッチェルバッグとショップバッグを置いた。
……鎮まれ、あたしの心臓。